読書
パトリック・ジュースキント(訳・池内紀)『香水 ある人殺しの物語』文藝春秋 (2003) 18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩きまわることができるほどの嗅覚──。異才はやがて香水調合師…
この門を過ぎれば なげきの市この門を過ぎれば 永遠の哀しみこの門を過ぎれば ほろびゆく命 いと高きもの 全能なるもの 永遠なるものを のぞけばこの門の前に ひれふさぬものなど どこにもいないこの門に入ろうとするものよ すべての望みを 捨てよ すべての…
一條次郎『レプリカたちの夜』新潮文庫(2020) 「とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました」伊坂幸太郎激賞、圧倒的デビュー作。動物のレプリカをつくる工場に勤める往本は、残業中の深夜、動くシロクマを目撃する。だが野生のシロクマは、とうに絶滅…
こんばんは、Clariceです。ダメでした。河出文庫の二階堂奥歯さん『八本脚の蝶』、去年購入したのに全部読めませんでした。私は、この本が美しい装丁と名声によって、ただただ美化されていることが、どうしても恐ろしいのです。 目覚めなさい。現実から目覚…
山尾悠子『飛ぶ孔雀』文芸春秋(2020) 石切り場の事故以来、火が燃えにくくなった世界。真夏の夜の庭園の大茶会で火を運ぶ娘たちは、孔雀に襲われる。一方、男は大蛇が蠢く地下世界を遍歴し―。煌めく言葉が奇異なる世界へと読者を誘う。不世出の幻想作家に…
塩野七海『想いの軌跡』 新潮社(2018) 地中海はインターネットでは絶対にわからない。陽光を浴び、風に吹かれ、大気を胸深く吸う必要がある―。単身ヨーロッパに渡り、思わぬきっかけで作家デビューを果たして半世紀。歴史的大ヒット作となった『ローマ人の…
『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』 (2014)メイソン・カリー著、金原瑞人/石田文子訳 161人の天才たちの「意外?」「納得」な毎日の習慣。 小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督…彼らはどうク…
今回は、アルゼンチンの幻想作家ボルヘス(1899-1986)の作品をいくつか読んだうえで、個人的に好きだと感じた短編を紹介したい。ボルヘスの話は、空想とも過去のエピソードとも知れない不思議な語り口が面白いのだ。この記事を通してボルヘスの描く幻想世界…
こんにちは、読書の秋を堪能しているClariceです(^^♪ 最近、幻想文学にすごい勢いでハマってしまいまして。本記事では、幻想文学と呼ばれるジャンルについて、お気に入りの作家別に紹介していきます。◇目次◇ はじめに 山尾悠子 ホルヘ・ルイス・ボルヘス パ…
泉鏡花『高野聖』角川文庫(1954) 飛騨から信州への道中、高野山の旅僧は危険な旧道を選んだ富山の薬売りを追うが、蛇や蛭に襲われ、やっとのことで山中の一軒家にたどり着く。一夜の宿を頼むと、その家の婦人は、汗を流せと僧を川に誘い妖艶な魅力で迫って…
小川洋子『口笛の上手な白雪姫』幻冬舎(2018) たとえ世界中が敵にまわっても、僕だけは味方だ。 公衆浴場で赤ん坊を預かるのが仕事の小母さん、 死んだ息子と劇場で再会した母親、 敬愛する作家の本を方々に置いて歩く受付嬢、 ひ孫とスパイ大作戦を立てる曽…
おはようございます。Clariceです(’-’*)♪今日は、読書時間についての雑談です。とりとめのないことをつらつらと書いているので、お気軽に読んでください。 私は、会社まで電車で通勤しています。その時間に読む読書タイムが、この世で一番没頭できる、と思っ…
須賀しのぶ『芙蓉千里』角川書店(2012) 「大陸一の売れっ子女郎になる」夢を抱いて哈爾濱(ハルビン)にやってきた少女フミ。妓桜・酔芙蓉(チョイフーロン)の下働きとなった彼女は、天性の愛嬌と舞の才能を買われ、芸妓の道を歩むことになった。夢を共有…
西尾維新『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』講談社(2015) 十年前に一度だけ見た星を探す少女―私立指輪学園中等部二年の瞳島眉美。彼女の探し物は、校内のトラブルを非公式非公開非営利に解決すると噂される謎の集団「美少年探偵団」が請け負うこと…
佐藤賢一『黒王妃』集英社(2020) 彼女は死ぬまで黒衣を愛した──。 現代に続くファッションの礎を築いた王妃カトリーヌ・ドゥ・メディシス(1519-1589)ルネサンス期、フィレンツェで生まれたカトリーヌ・ドゥ・メディシス。政略結婚でフランス王家に入り、や…
山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品選』/ 筑摩書房(2014) 「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」―未完に終わった“かれ”の草稿の舞台となるのは、基底と頂上が存在しない円筒形の塔の内部である“腸詰宇宙”。偽の天体が運行する異様な世界の…
今日は私の密かな趣味である、フリマアプリ「メルカリ」について、語りたいと思います。読書好きにとって、本は基本的に増える一方なのです。そして、場所をとります。本棚もすぐにいっぱいになりますし、机に積んでいる本が雪崩を起こす始末…(*_*;以前は、…
先ほど、最近始めたTwitterで「名刺代わりの小説10選」についてツイートしました。皆さん既にご存知かもしれませんが、これが面白いタグなのです。 他の方のツイートを見ていても、10冊の傾向から趣味嗜好が何となく掴めます。 個性が出るので、ついつい人と…
『星の巡礼』角川文庫(1998) パウロ・コエーリョ/山川鉱矢・山川亜希子=訳 神秘の扉を目の前にして最後の試験に失敗し、奇跡の剣を手にすることができなかったパウロ。残された唯一の道は、「星の道」と呼ばれる巡礼路を旅して、自らその剣を見つけること…
塩野七海『サロメの乳母の話』新潮文庫(2003) ホメロスが謳うオデュッセウスの漂流譚はでっちあげだ!と糾弾する妻ペネロペ。不器用で世渡りが下手な夫を嘆くダンテの妻。サロメの乳母、キリストの弟、聖フランチェスコの母、ブルータスの師、カリグラ帝の…
三浦しをん『舟を編む』光文社(2015) 出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧…
ドイツ、ヴュルツブルク生まれの詩人、マックス・ダウテンダイ Max Dauthendey(1869-1918)をご存じですか。 私が、最近知ってから、大好きになった詩人です。代表作は『紫外線』(1893)。 神秘的な東洋風の詩を多く残し、第一次大戦中、旅先のジャワでマラ…
見事な赤い薔薇たちに出会えました。 久々の外出です。 本当は紫陽花を見る目的で訪れたガーデンですが、やはり西洋の香りには抗えませんでした…(^^; まるでルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の世界に迷いこんだみたいです。よろしければ、BGMにどう…
舞台は、退廃に彩られた19世紀末のロンドン。病弱な青年だったビアズリーはイギリスの代表的作家で男色家のワイルドに見いだされ、『サロメ』の挿絵で一躍有名画家になった。二人の関係はビアズリーの姉やワイルドの同姓の恋人を巻き込み、四巴の愛憎関係に……
『蜜蜂と遠雷』、エッセイ『土曜日は灰色の馬』に続き、3冊目を読了。『蜜蜂と遠雷』とエッセイでお腹一杯になったので、著者の他作品はしばらく期間を空けようかと考えていたが、縁あって手元に届いたので読むことに。 恩田陸『光の帝国 常野物語』集英社(…
今回は、「世界の七不思議」というワードに胸を高鳴らせていたあの頃の気持ちになって書きたい。ギザの大ピラミッド バビロンの空中庭園 エフェソスのアルテミス神殿 オリンピアのゼウス像 ハリカルナッソスのマウソロス霊廟 ロドス島の巨像 アレクサンドリ…
この間、本棚に眠っていた読みかけの本を見つけたので、最後まで読んだ。 宮下規久朗『モチーフで読む美術史』1・2巻 初版2013年、筑摩書房本書は、著者が新聞のコラムとして書き連ねた記事が加筆修正され、まとめられたものだ。焦点は、美術作品でよく取り…
待望の堀川アサコさんによる幻想シリーズの最新作、『幻想蒸気船』を読了。今年4月15日に講談社から文庫書き下ろしで出版されたピカピカの本だ。ストーリーの大きなネタバレはありませんが、苦手な方はご注意下さい。著者の堀川さんは和風ホラーとハートフル…
はじめに 西洋人にとってのオリエンタリズム 中世 近世・近代 ファンタジーとして おわりに はじめに なぜ人はアラビアンな世界に惹かれるのか?ディズニー映画『アラジン』もウィル・スミス主演で実写化を果たし、大人気だった。 音楽、情景描写、衣装、ど…
はじめに 下積み時代 生活の激変 晩年 おわりに 参考文献 はじめに 「印象派」と呼ばれる画家たちの色彩豊かな絵画は、日本人にとって馴染みが深く、最も人気の高い絵なのではないでしょうか。 以前、クロード・モネの「印象・日の出」を目玉作品とした巡回…