この門を過ぎれば
なげきの市
この門を過ぎれば
永遠の哀しみ
この門を過ぎれば
ほろびゆく命
いと高きもの
全能なるもの
永遠なるものを
のぞけば
この門の前に
ひれふさぬものなど
どこにもいない
この門に入ろうとするものよ
すべての望みを
捨てよ
すべての悦びを
捨てよ
すべての愛を
捨てよ
ーダンテ・アリギエリ(1304)
かっこいい。大迫力。まるで魂まで震えるようだ。
ルネサンスの先駆者ダンテ、大好きなんですよ。
昔、神曲を背伸びして読んだけど、今考えたら信じられないくらい豪華な歴史上の登場人物たちのはずが、当時はあまり知らなくて。
そろそろ読み返そうか。
ダンテ自身が自分の敬愛する詩人ウェルギリウスに連れられて、地獄をめぐる物語を書くなんて発想が大胆すぎでしょう。
極めつけは、結ばれることのなかった同い年の女性ベアトリーチェを神格化してしまうところ。
この生涯をかけた恋心は崇高なのか?
現代女の私からいわせると、妻がいる身でありながら!と思わざるを得ないのですが。
このあたりは、塩野七生さんの『サロメの乳母』収録話「ダンテの妻の嘆き」の影響を受けているせいでもある。
塩野先生節に、染まっている。
ダンテはカトリック世界に染まっていたが、なんと人間臭いひとなのだろう。
もはや愛しい。
下の写真はロダンの彫刻「地獄の門」。
いつか行った上野の国立西洋美術館の庭にある。
「考える人」はどこにいるでしょうか。
詩の引用は、
小沢章友さん『読まずに死ねない世界の名詩50編より』(2017)より拝借しました。