こんばんは、Clariceです。
本は好きですが、何時間も読みふけるというような読書スタイルはとらなくなりました。
心と時間の余裕あるときに、2~3冊をなんとなく併読するというような適当ゆるスタイルです。
最近はもっぱら睡眠導入剤として。
今年出会った本は、自分の好みにあったものもあれば、そうでないものもありました。
個人的な意見を正直に書くので、目次を見てネタバレ読みたくない方はブラウザバックを推奨します。
昨年末から今年読んだ未紹介の書籍をご紹介。
◇目次◇
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『おやすみ、東京』吉田篤弘
(ハルキ文庫/2019)
東京の夜を舞台に、街で暮らすさまざまな職種の人々が交錯するオムニバス形式の長篇小説。
深夜の都市の静寂、そのなかで人のかかわり合いがぬくもりをもって際立ちます。
何より、ネーミングセンスがどこをとってもオシャレ。
夜専門のタクシー会社「ブラックバード」。オールナイトで過去のマイナーな作品を上映している「新宿彗星シネマ」。深夜営業の食堂「よつかど」。
この作家様の文章はごはんの描写が丁寧で、とっても食欲を刺激します。
食堂で提供されるハムエッグ定食、冷えたグラスでいただくとっておきのコークハイ。
他の作品もぜひに読んでみたいと思いました。
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『夢の本』J・L・ボルヘス(訳=堀内研二)
(河出文庫/2019)
夢というものが象徴性に満ちていて、無意識からのメッセージのあらわれであるというのはユングの言葉。
この本は、夢をモチーフとしたあらゆる伝承や文学、詩の引用で編まれた113篇のアンソロジーとなっている。
初刊は1976年。ボルヘス初の単独編集であったといいます。
引用元は、ギルガメシュ叙事詩に、オデュッセイア、聖書、千夜一夜物語、ビスマルクの書簡なんていうのも。
そして、ときおりボルヘス自身の詩が入っています。
「おそらくは深奥なる未来の曲がり角で、
再びお前に出会うだろう、夢の白鹿よ
この私もまた、牧場の白さの夢よりも、
少しばかり長く続くだけの醒めた夢。」
シェイクスピアであったり、ルイス・キャロルのアリスであったり、荘子であったり、自分もまた誰かの夢であるかも系の引用が随所に。
余談だが、歴史的名作であるFF10も、たしか都市の見る夢がテーマ。
この本を購入したきっかけは、ボルヘスの混沌とした世界にまた触れたくなったから。
そんな折、奇しくも大好きな声優様のひとりである斉藤壮馬さんがフェア協力者として帯を飾っていらした(!)
解説は、『鏡のなかのアジア』で個人的にファンになった谷崎由依さん。
私のあらゆる好きなもの同士が一冊の文庫本にて繋がっていて、驚いた。
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『サーカスの夜に』小川糸
(新潮文庫/2020)
両親の離婚によりひとりぼっちになった身体の小さな少年が、幼少期からの夢だったレインボーサーカスで仲間たちと絆を深める成長物語。
作中に出てくる登場人物たちの名まえが可愛い。
トロ、ローズ、ナット―、テキーラ、キャビア、トリッパ、マカロン等。
サーカスに魅せられた主人公の少年は、キャラバンお付きのコックの下働きからはじまり、ゆくゆくは芸を習得する。
描写が可愛いし、逆境に立ち向かう主人公の少年や仲間たちから勇気をもらえるような温かくて優しい物語。
色鮮やかな絵本を読んでいるかのようで、幼少期に読んでいればもっと楽しめたのにと悔やまれる。
これは個人的な問題なのですが、映画『グレイテスト・ショーマン』を観た時でさえ感じた、手放しで楽しめない、自分の面倒くさい視点が邪魔だった。
大学時代、旅芸人の実態とイメージの変遷に関する研究をしていたため。
芸能ニュースを見ていても、事実よりも世間の捉え方に対してばかり、ひとり白けている自分がどうしようもないのだった。
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『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子
(講談社文庫/2014)
珍しく、珍しく、恋愛小説でも読むかと手に取ったのがこの本。
表紙とタイトルに惹かれたのと、帯に「世界中が涙する、最高の恋愛小説」とあったから。
結論を先に言うと、体質に合わなかった。
作者さんはフェミニストか?と思う部分があまりにも多かったのがキツかったのかなぁ。
登場人物たちの言葉に作者さんの感情がのりすぎている感じがして、フィクションを読んでいるのか、なんなのかわからなくなること多々。
これは自分の問題ですが、そもそも、主人公の女性の意見をはっきり持てない、自我のない感じに、共感できず。
だいたい女の人間関係をこんなにドロドロで陰湿に書くのが、単に合わない。
マウントの取り合いしかないみたいに。
作中の言葉の悪意が理不尽にきつくて、主人公視点の被害妄想と違うかと思いながら読んでいた。
これだから一人称作品は、こわいのだ。
舞台が現代日本の作品を全然読んでこなかったのは、こういう理由が強い。
それから女のドロドロはドラマや小説のテーマにはもってこいなのはわかるけど、読んでて私はあまりいい気分しない。
源氏物語は面白いけれども。
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『迷宮遊覧飛行』山尾悠子
(国書刊行会/2023.1)
幻想文学にひきずりこまれた大好きな作家様。
自作解説や掌編小説を含む、初のエッセイ集ということで、文庫本しか買わない自分が発売してすぐに購入した本。
泉鏡花、澁澤龍彦、ボルヘスを偏愛する著者のビブリオフィリアを改めて楽しめた。
初めて読んだ、いまでも一番好きな『歪み真珠』では、文字を追っているはずなのに絵画鑑賞的であることに衝撃を受けた。
繊細、緻密な文章構築により完成された世界を、最後の最後にぶちこわす、カタストロフィ精神が背徳的で美しい。
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『センス・オブ・ワンダー』レイチェル・カーソン(訳=上遠恵子)
(新潮文庫/2021)
著者は海洋生物学者として、1960年代に環境問題に警鐘を鳴らした先駆者。
甥のロジャーとの自然に囲まれた生活の中で、自然の声に耳を傾け、はっとする瞬間が優しい言葉で紡がれています。
生物ジャーナリストとして自然環境破壊を痛烈に批判した『沈黙の春』を読みたいと思っていたら、先にこちらを読んでしまいました。
著者は、本書で「知ること」は「感じること」の半分も重要ではないと言います。
さまざまな情緒やゆたかな感受性は、今後出会う事実、つまり知識や知恵という種子のための肥沃な土壌であると。
消化能力の備わっていない子供に事実をうのみにさせるのではなく、道をきりひらいてやることのほうが大切だと説かれています。
自然世界への接し方はもちろんのこと、すべての教育に通じる本質的な部分に触れた気がして、ひとり嬉しくなりました。
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以上が私の、今年の読書体験でした。
あまり読んでない年かと思いましたが、自分にとって意味のある本に出会えました。
『センス・オブ・ワンダー』、ブッツァーティ『タタール人の砂漠』(軽井沢旅行の記事で感想を書いていたもの)。
アンデルセンの『絵のない絵本』とは、愛蔵版での出版という形で、時を越えた再会。
ちょっと感動的でした。
本好きでよかった。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!(^^♪