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動物とビートとカタストロフィに酔う。一條次郎『動物たちのまーまー』感想

一條次郎『動物たちのまーまー』


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耳を澄ませ。何かが聞こえる――。テノリネコが膨らむ音が。徘徊するネコビトたちの呟きが。貝殻プールのラッコの水音が。盗んだトウモロコシをゆでる熊のご機嫌な鼻歌が。そして、吸血鬼(バンパイア)の奏でる陽気なラグタイムピアノが……。混沌と不条理の中に、世界の裏側へと読者を誘う魅惑的な企みが潜む。デビュー作『レプリカたちの夜』で大ブレイクした鬼才による、異彩を放つ傑作オリジナル短篇集。

◇タイトルテーマについて

タイトルにある「まーまー」という不思議な響きは、英語の擬音語であると冒頭にあった。

"mur・mur"
(連続的な)かすかな音、(低い)ざわめき、(小川・木の葉・ハチなどの)さらさらいう音、ささやき、かすかな人声、不平のつぶやき、(聴診して聞こえる)心雑音
(英和辞典・和英辞典 - Weblio辞書より引用)


以前、同じ作者の『レプリカたちの夜』という本を読んだ。主人公が深夜の動物レプリカ工場で動くシロクマを目撃する話だった。

今回は、短編集だ。動物と音楽を扱う点は相変わらず。

一條さんの軽快な文章は読んでいるだけで、スウィングジャズにラグタイムに、なんかよくわかんない異国の音楽があたまのなかをわんわん鳴り響くような感覚になる。

◇お気に入り紹介

「テノリネコ」
社長の留守中に預かった、「テノリネコ」が外部の騒音を吸収しては巨大化し、収拾がつかなくなる話。

主人公の心配をものともせず、近隣から鳴り響く騒音。
隣人のリンジーンさんのチェーンソーによる作業音。

ロマ風の老女バーサーンが調律の狂ったピアノで奏でる無限多重奏。
彼女曰く「反復して増幅して増殖する」音楽なのだという。
どうも造語っぽいなぁ。

言葉遊びのセンスが抜群。


「貝殻プールでまちあわせ」
タイトルでもう優勝。

清掃会社に勤める主人公が、社長の知り合いの依頼人が所有する海辺の別荘を、彼の留守中に掃除しようというところから始まる。

依頼人は元マフィアの画家だという。(⁉)

しかも、描く絵はボッティチェリヴィーナスの誕生』に着想を得たへんてこなものだ。貝殻の上に刺青の男や、ふんどしの男が乗っている。(⁉)

そして、その屋敷の庭には貝殻の形をしたプールがあり、そこにはなぜかラッコが泳いでいるのだ。(⁉)

しかし、依頼人はラッコなど知らないという。
さて、どうやって追い出そう。という話。

もはや、カオス。でもなんかシュールで可愛い。

◇感想

もうすっかり世界観の虜になってしまった。

すぐゲームに例えるのが私の悪い癖だが、あれに似てるんだ。
バンダイナムコの『塊魂』。(わからない方は無視してください)

軽快なビート感。シュールレアリスム。終盤の怒涛のカタストロフィ。
最後に残るのは、虚無感。

しかし、読了後の気分はそんなに悪くない。

―あぁ、現実だ。今、現実にいる。なんか、頑張ろう。
そのすべての過程が愛おしく思えるはず。

近々、一條さんの著作『ざんねんなスパイ』も読むだろう。

『レプリカたちの夜』読了記事はこちらから↓
lavandula-pinnata.hatenablog.com



今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!(^^♪

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