このあいだ、仕事の休憩中に友人のポラリスちゃんから夜ごはんのお誘いがあった。
残業を終えて、待ち合わせ場所に向かう途中、「Tくんもいるけど、いい?」
「あー、あのコね。いいよー」ということで、三人で夜遅くまでやってるカフェに行った。
Tくんは、ポラちゃんの元職場の後輩であり、私の大学の後輩でもある(在学中に面識はない)。
真面目でめっちゃいい子!だけど変わっている。
いかにも同じ大学出身っぽい。世間に関心がないとことか。
ポラリスちゃんとTくんは福祉系の職員で、医療関係や市と連携したプロジェクトの話とかをしていた。眩しい。。
私は仕事終わりで劇的に疲れていたし(いつものこと)、気の置けないポラリスちゃんとふたりのつもりだったから、相槌だけ打っていた。
「…それで―、あれで―、クラちゃんからも言ってやってよ~!ほんと、のれんに腕押しなんだってば」
ポラリスちゃんが呆れ顔でこっちを見た。Tくんは不服そうに言う。
「自炊しなくても生きていけますよ。外食とカップ麺だけで現に生きてるんですもん」
私は、頬杖をつきながら答えた。
「それはやばいよ、自分。たぶん30歳になったらガタが来るよ。知らんけど」
「そのぶん、ジムで鍛えてるし、プロテイン飲んでるので補えてます」
「クラちゃんと同じこと言ってる!」
「一緒にするんじゃないよ(´・ω・`)」
これは単なるポラリスちゃんのおせっかいじゃなくて、問題はTくんが人生が寂しいとか虚しいと相談してきている点にある。
しかしながら、私は人の食生活とかどうでもいいし、改善する気のない人に何か言う気力を持ち合わせていないのである(最低)
対して、隣人愛にあふれるポラリスちゃんは、炊飯器を買いなさい、とその場でアマゾンで買わせようとしていた。
「要りませんよ!置くとこないんです!」
Tくんはなお、拒んでいた。ちゃぶ台に置きなさいよ!地べたでもいいじゃん!とボロカスに言われていた。私に。
「あのー今時はちゃぶ台じゃなくて、ローテーブルって言うのですよ」
「おのれ!オマエはひろゆきか!」
ポラリスちゃんは、ふと顔を上げた。
「Tくん誕生日いつ?」
「○月です」
「じゃあ、プレゼントで買ってあげるから、まずお米を炊くのだ」
ポラリスちゃんの提案に、私は椅子から落ちそうになった。何が、何がそうまでさせる!?
Tくん、にっこり。
「もらったら、さすがに使わないわけにはいきませんね。楽しみにしてます」
眩しすぎて、塵になるかと思った。
嗚呼ポラリスちゃん、どうしてあなたはそんなに他者に親身になれるのか。
キリストの教えの偉大さを目の当たりにする。
っていうのは冗談で、普通に彼女のもともとの性格。私はこっちに共鳴している。
私とは思考回路の向きが真逆で、それは性善説と性悪説という部分で、ほんと、立派だと思う。。
「でも俺だって、さすがに野菜が不足してるなってときは買いますよ。基本、生野菜のままいけるやつを、そのまま食べるんですけど」
「ウサギのエサじゃないんだから調理しなよ」と言うと、いやいや、と反論してきた。
「食材って、火を通したら栄養が死ぬことが多いですよ。茹でたら流れるし」
さすがに、このへんからボケなんだなとは思いながらも、討論が始まった。
「人類は縄文時代でも煮炊きしながら生きてたんだよ。非文明的な生き方で自ら文化的な最低限度の生活を手放してるから、虚しいんでしょうが」
「歴史学科…笑。乾麺とか電子レンジという文明の利器がありますから」
「ヒトというものは、火の周りに集まって暮らしを営んできたんだ。だから人間って生き物の本質的な部分で、外食とかレンチンばっかりでは精神的によくないの」
「Tくん、お願いだからこれ以上クラちゃんを疲れさせないで!彼女は仕事でも同じようなことしてきて疲れてるんだ今」
ポラリスちゃんが隣で爆笑していた。Tくんも爆笑していた。
その話題はそれで終わった。
まぁ多分、北風と太陽で、ポラリスちゃんが炊飯器を送ったら、使うでしょう。私がアレコレ言っても無駄。一連のこれは茶番。関西人のプロレスみたいなもの。
ポラリスちゃんは面倒見がいいから、人の話を聞くのがうまい。
「ほんと、持つべきものは、のれんに腕押しスキルだねー。仕事で嫌なこととかないでしょ」
「プレッシャーとかはあるけど、辞めたいとかは特にないすね。失敗して人に迷惑をかけるのは怖いです」
北風の私は先輩風をびゅうびゅう吹かせる。
「失敗はみんなが通る道だぞ、若いの。みんな隠蔽がうまいだけ」
「そんな年離れてないでしょうが…」
しかし、、いーなー!のれんスキル、私もほしいわー。
細かいことをいちいち気にしていたらキリないもんなー。
帰り道、ようやくポラリスちゃんに話を聞いてもらえた。
そのちょうど前日くらいのこと。
同期数人と飲みに行ったときに、最近どうかという話になって。
休日何してんの?って聞かれて、資格の勉強したりジム行ったり、遊びに行ったり、なんだかんだ忙しいと言うと、
「何を目指してるか知らんけど、そろそろ人生に折り合いつけて妥協しないと、幸せになれないよ。アラサーになっちゃうよ」
「ある程度、あきらめも大事」←入籍前
と、ちょっと意味不明なことを言われて、何が?ってなった。
たまたまだけどこの発言してきた人、みんな男でキショかったって話。
これはほんとに八つ当たりになるけど、こういうのが平気で居るから、心に傷を負って復職できないコがいるんじゃないのかって思った。
てか、狭い世界の自分の尺度で、人の幸せとか生き方について口出ししてくるのが気に食わない。←ココ重要
人生の妥協ってなに?
ついでに関係ないけど、アラサーとかって言葉、あんまり好きじゃない。
自虐とか偏見が垣間見えて、私は好きじゃない。(あくまでも私は、って話)
もう二度と行かねーって話をしていたら、ポラちゃんが笑い飛ばしてくれた。
「他人のことを知ってるつもりなんだろうね、彼らは!それは嫌ねー」
みんながみんな、そうではないのはわかっておりますとも。
長い間柄だから言っちゃったんでしょうね~。
でも、他人のこと、わかったように話すの、本当にやめたほうがいいと思うな。
たいした間柄でもないのに、失礼ですよ。
そういうノンデリ発言が、ハラスメントにつながるんでわ?
働く女の生きづらさ、ってこういうとこにありにけり。
職場はキャバクラでもホスクラでもないっつーの。