昔の自分から、時を超えて手紙が届く、というのは不思議な感覚である。
だが、不可能なことではない。
今手元にあるこの手紙は、中学生の時、ホームルームで20歳の自分へ書いたものだ。
だから、
中学生の自分(大過去)→<手紙>→未来の自分(過去)←現在(´Д⊂ヽ
という時間軸で当時を回想していることになる。
高校受験真っ盛り。担任の先生の素敵な提案だった。
責任をもって全員分を預かり、各々の家へ送ってくださった。
20歳で、中学生の自分からの手紙が送られてきたときには、感動したもののあまり実感がわかなかった。
というのも、中学生時代の自分は、20歳の自分が大学に行っているイメージを持ちえなかったためである。
周囲に、大学卒がいない環境だったためだ。
手紙は、働いている自分へあてて書かれていた。
だから、10年の時を経た、今の自分に最も響くのであったΣ(・ω・ノ)ノ!
全文ママ掲載。
…は、ちょっとお粗末すぎて爆死するため、書ける部分のみ書こう。
先に断っておくが、私は昔から今に至るまでアホである。知性や品性のカケラもないのだ。
この手紙を書いた自分は、まさに厨二病まっさかり。
覚悟して、挑むべし。
3月1日
おひさしぶりです。20歳の私は元気にしてますか?
ご飯ちゃんと食べてますか?勉強してますか?
私は元気です。
勉強してます。なんと毎日4時半~5時起きです。
さらに夜更かししてます。肌の調子が良くありません。
公立入試が5日後なので、ストレスもたまってますが、小説を書いて耐えています。
とにかく勉強してます。
まぁ、私立入試の方が倍率4・8とエグイので、やっぱり心配です。
本命は、1・6倍なので、1人と2/3人を倒したら大丈夫。
がんばります。おうえんよろしく。
ところで、英語&数学嫌いは治っていますか?
数学は吐き気がするくらい嫌いです。特に比率が。
恋はしていますか?その年でティエリアどうこう言っていたら(略)
明日海りおさんは退団しちゃったかな…次期トップ決定中。
私は宝塚に入ってる?入ってたらすごいね、おめでとう!
ニートにだけはならないでよ?手に職が就いていることを切実に願ってるよ?
p.s.お仕事がんばれ。
(以降、二枚目)
趣味のピアノもまだ続けてるんですか?私はドビュッシーの「雨の庭」を超高速で弾けます!
ピアノの調律師とか目指してるんですかね~。
辛いこともあるでしょうが、立ち止まらないでくださいね。
私もがんばります。
途中、キーボードをたたく手が震えた。笑う。
恐れを知らぬその態度に乾杯。
どこからツッコめばいいのやら、わからない。
いや、もう何も言うまい。
補足も、言い訳も、この手紙を前にすれば、もはや何も言うまいだ。
だから、お返事をここに書こうと思う。
どうか数々の無念が成仏せんことを。
15歳のあなたへ。
ご無沙汰しておりました。お返事をするのにさらに5年の歳月が経ってしまいました。
お返事をブログの記事に書いています。
まずは朗報。あなたが一番に心配していらした、「手に職」問題ですが、ご安心を。
このとおり、立派な社畜となりました。ちゃんと稼ぎがあるから大丈夫よ。
勉強、よくがんばりましたね。5日後の公立入試は、無事通過していましたよ。
おかげで、とても充実した高校生活を送ることができました。ありがとう。
そこで、あなたはまだ知らないだろうけど、高校の授業で、歴史の底なし沼にハマることになります。
それはもう、人生狂わせるほど、深く深く。。
そして20歳の頃の自分は、大学で西洋史学を勉強していましたよ。
あなたの嫌いだった英語も、読むしかなかったから頑張ったよ。笑
だって西洋史だもん。日本語の史料なんてないんだ。
ドイツ語も少しわかるようになるよ。
初めて、友人たちと憧れのヨーロッパにも行きます。
ちなみに、数学嫌いはまだ治ってません笑
ピアノ、好きなんだね。
今はもう手が硬化して、弾けないよドビュッシーは笑
残念ながら、今の自分はもちろんタカラジェンヌでもないし(これはジョークか笑)、調律の狂ったピアノであいかわらず練習しているよ。
あ、でも、受験した高校でコーラスの部長になるよ!
大学では、ステージでソロもはることになります。洋楽ばかり歌うんだよ。驚いた?
ここのあたりで、人見知りの性格が完全に消えます。
生涯付き合いたいような、素晴らしい友人がそれはもうたくさんできるよ。
あなたの憧れの明日海りおさんは、ドラマにたくさん出てるよ!
あいかわらず、お綺麗でかっこいいよ!
色恋関連は言わぬが花ということで笑
大学で恋話番長って謎の異名がつくけどね。
ガンダムダブルオー好きだったんだよね笑 それは覚えてる。
あの作品は受験生のときに観てくれてて良かったよ。あれに人生学んだ。
…入試5日前に小説書いてるのは笑ったわ。
まぁ、今も書いているから安心してほしい。
やってること変わってないよ。
中学生時代は、今思い返しても、ほんとうにいろいろ悩みぬいた一番の激動の時だった。
とにかく、おつかれさま。手紙、嬉しかったよ。
7月15日 Clariceより
さて、過去の自分と出会うと言ったら、ドラクエ5「天空の花嫁」における、青年期の自分が少年期の自分に会いに行くシーンか。
いえいえ。それだけではございません。
ボルヘスの短編『他者』は、70歳を過ぎたボルヘスが、20代のころの自分と出会い、驚きながらも話かけるという物語だった。
老ボルヘスは、青年ボルヘスの本好き臭い言い回しに対して、しみじみと言う。
「やはり、ちっとも変わっていなかったのだな」と。
うーん。感慨深いものですね。
これだから、記録はやめられない。
日記も、読書記録も、旅日記も、雑誌のスクラップも、それからブログもね(^^)
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!(^^♪
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」