この間、本棚に眠っていた読みかけの本を見つけたので、最後まで読んだ。
宮下規久朗『モチーフで読む美術史』1・2巻
初版2013年、筑摩書房
本書は、著者が新聞のコラムとして書き連ねた記事が加筆修正され、まとめられたものだ。
焦点は、美術作品でよく取り入れられるモチーフに当てられている。
そのモチーフというのが様々で、
犬、猫、羊、竜などの生き物にはじまり、
パンやチーズ、豆、ジャガイモなどの食物、
そして、十字架、砂時計、鏡、天秤などの道具。
それぞれのモチーフに象徴される、
古今東西の神話のエピソードや当時の歴史的背景がリズムよく書かれている。
特に私が面白いと感じたのは、「竜」のモチーフについてのページだ。
竜は、西洋では悪、東洋では善、と対照的な象徴となる。
西洋において、竜退治は英雄伝の格好のテーマとして扱われた。ラテン語では、蛇と竜はドラコというのが同一の単語であり、しばしば混同されたという。
キリスト教においても両者は、悪魔や異端の象徴とされた。
対して、
東洋では、インドや中国では竜は神聖な動物であり、中国では皇帝のシンボルとされた。
また、日本では蛇神信仰と仏教の竜神が融合し、雨を降らせる存在として民間信仰の対象となったという。
この本に出会うまで、
このような東西でのモチーフの解釈の違いを意識したことはなかった。非常に興味深い。
そして、
この本の魅力は何といっても、美術作品の図版がフルカラーで一冊あたり約150点も載っていること。
思わぬお宝を見つけたなぁと嬉しくなった。
予備知識があれば、美術鑑賞の面白さは何倍にもなる。
コロナ騒動の直前、最後に行ったのは六本木にある国立新美術館のブダペスト展だった。
現在は臨時休館中だ。
ハンガリーの画家逹に加え、
ドービニー、ルノワール、ゴヤらの素晴らしい作品を観ることができた。
全国各地の美術展の予定も大いに狂ってしまっている。
展覧会のための準備に奔走されている、学芸員関係者の方々が気の毒でならない。
早く収束することを切に願うばかりだ。
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