待望の堀川アサコさんによる幻想シリーズの最新作、『幻想蒸気船』を読了。
今年4月15日に講談社から文庫書き下ろしで出版されたピカピカの本だ。
ストーリーの大きなネタバレはありませんが、苦手な方はご注意下さい。
著者の堀川さんは和風ホラーとハートフルの名手だ。
2006年に『闇鏡』でファンタジーノベル大賞優秀賞を授賞してデビューされている。
『幻想郵便局』にはじまる幻想シリーズは、作品ごとに異なる舞台と主人公により物語が展開する。
そして、主人公が様々なきっかけから
へんてこな人々と摩訶不思議な施設で働く、というシリーズを通しての設定が敷かれている。
それらの施設…つまり
郵便局、映画館、日記店、温泉郷、汽船会社等の施設には不思議な共通点がある。
勤務者たちは、
日常の業務をこなしながらも、特別不思議な役割を担っているのだ。
それというのが、
あの世とこの世を結んだ「境界エリア」としての役割。
郵便局では、悔いを残して成仏できない死者からの手紙を夢枕に届ける。功徳が明記された、功徳通帳の記帳。
映画館では、走馬灯の上映などなど。
今回は、
蒸気船が死者をのせて万歳三唱、華やかなファンファーレをバックに色とりどりの紙吹雪のなか、満を持してあの世へ送り出していた。
境界エリアの人々は、癖が強くも、魅力的だ。
そのなかには、危険な怨霊や神様も。
主人公たちが事件に巻き込まれたときのホラー描写は、背筋が凍るほどの恐怖感だ。
しかし、最後には必ず感動が用意されている。
作品を通して、
著者である堀川さんの優しい死生観が描かれている。
この世とあの世を繋ぐ場所が、私たちの知らないところで世間に隠れているのかも。
最新作・幻想蒸気船もシリーズのいいところがすべて健在だった。
今回は時代を越えて江戸に来航した黒船の幽霊船、ペリーの幽霊が登場したりとまた新たな世界観が楽しめた。
奇妙島という江戸時代から鎖国を続ける架空の島では、個性豊かな妖怪もたくさん登場する。
子タヌキの赤殿中、天狗、青坊主、恐ろしい大妖怪の鵺。
そして、展開の早さ、丁寧で美しい情景描写も好み。
舞台が海だったのも新鮮だった。
日常の延長線にある、心温まる(ちょっぴり怖い)ファンタジー。
あの世への旅立ちがこんなだったら本当にいいなぁ。
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