印象をただよう告解部屋

キラリと思い浮かんだことあれこれ

優しい死生観を小説で読む~堀川アサコ『幻想蒸気船』読了したので幻想シリーズの魅力を紹介~

待望の堀川アサコさんによる幻想シリーズの最新作、『幻想蒸気船』を読了。

今年4月15日に講談社から文庫書き下ろしで出版されたピカピカの本だ。

ストーリーの大きなネタバレはありませんが、苦手な方はご注意下さい。

f:id:Lavandula-pinnata:20200520180445j:plain

著者の堀川さんは和風ホラーとハートフルの名手だ。
2006年に『闇鏡』でファンタジーノベル大賞優秀賞を授賞してデビューされている。

『幻想郵便局』にはじまる幻想シリーズは、作品ごとに異なる舞台と主人公により物語が展開する。
そして、主人公が様々なきっかけから
へんてこな人々と摩訶不思議な施設で働く、というシリーズを通しての設定が敷かれている。

それらの施設…つまり
郵便局、映画館、日記店、温泉郷、汽船会社等の施設には不思議な共通点がある。
勤務者たちは、
日常の業務をこなしながらも、特別不思議な役割を担っているのだ。
f:id:Lavandula-pinnata:20200520173922j:plain
それというのが、
あの世とこの世を結んだ「境界エリア」としての役割。

郵便局では、悔いを残して成仏できない死者からの手紙を夢枕に届ける。功徳が明記された、功徳通帳の記帳。
映画館では、走馬灯の上映などなど。

今回は、
蒸気船が死者をのせて万歳三唱、華やかなファンファーレをバックに色とりどりの紙吹雪のなか、満を持してあの世へ送り出していた。

境界エリアの人々は、癖が強くも、魅力的だ。
そのなかには、危険な怨霊や神様も。
主人公たちが事件に巻き込まれたときのホラー描写は、背筋が凍るほどの恐怖感だ。

しかし、最後には必ず感動が用意されている。
作品を通して、
著者である堀川さんの優しい死生観が描かれている。

この世とあの世を繋ぐ場所が、私たちの知らないところで世間に隠れているのかも。

最新作・幻想蒸気船もシリーズのいいところがすべて健在だった。
今回は時代を越えて江戸に来航した黒船の幽霊船、ペリーの幽霊が登場したりとまた新たな世界観が楽しめた。

奇妙島という江戸時代から鎖国を続ける架空の島では、個性豊かな妖怪もたくさん登場する。
子タヌキの赤殿中、天狗、青坊主、恐ろしい大妖怪の鵺。

そして、展開の早さ、丁寧で美しい情景描写も好み。
舞台が海だったのも新鮮だった。

日常の延長線にある、心温まる(ちょっぴり怖い)ファンタジー

あの世への旅立ちがこんなだったら本当にいいなぁ。
f:id:Lavandula-pinnata:20200520180102j:plain
--------------------
ランキング参加してます。
押してくださったら非常に励みになります(^-^)
PVアクセスランキング にほんブログ村
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村

プライバシーポリシー