少し前にアマプラで観たサイコホラー映画!
とっても面白かった!
「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の2作目だという。
私はザ・ホラーは苦手なのだが、民俗学好きにはたまらないのではないか。
例によって独断と偏見で、おすすめ要素を書く。
不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。
(映画.comより引用)
ーcontentsー
Ⅰ 映像美について
村はその時期になると日が数時間しか沈まなくなり、祭りの間はみんな一緒に揃って生活を送る。
食事は外で長いテーブルにずらりと並び、毎回決まった女性の合図で、いっせいにとる。
果てしなくひろがる草原に白いテーブル。
一様に白い服装の村人たち。
カチャカチャという食器の音だけが異様に響く。
招かれた主人公一行は、気味悪く思いながらも、ここはこういう文化なのだと互いに言い聞かせるのだった。
しかし、画面が常に綺麗なのだ。
白いクロスを縁どる幾何学の刺繍。
色とりどりの花冠。
入念に編みこまれた金髪に、主人公たちとは別の世界を見つめるような青い瞳。(やがて、この世界は溶け合う)
とにかくこれでもかというほど敷き詰められる祝祭の花々。
ずっと明るいものだから、明瞭に見える。
グロテスクな場面も。狂気に満ちた表情も。
Ⅱ 考察しがいのあるモチーフ
各所にギミックが凝らされている。
ただし、決してすべて明らかにはならない。
多分、制作側にもすべてに意味などなくて、観る者の想像力を不穏にかきたてるべく様々なモチーフを散りばめているのだと思われる。
(そう感じるほど限りがない)
祭りが北欧神話に関するものだというのは、村の族長が主人公たちに話していた。
そこでは、巨人族の始祖ユミルの名が出てくる。
とっさにアニメ『進撃の巨人』を連想するが、アニメ界に衝撃を与えた『進撃』こそ北欧神話からストーリーの根幹となるかなりの部分を依っているので、まぁ当然である。
(やはり素晴らしい作品にはそれなりのイメージの源泉があるのだ)
ただし北欧神話の部分は、多分掴みにすぎない。と感じる。
その架空の村の、そこからさらに踏み込んだ土着的な独自の伝統文化(とされているもの)が面白い。
実際にありそう。むしろ、あってもおかしくない。となる。
それがどんどん過激になって、こちらの感覚もおかしくなっていく不思議。
これが秀逸なのである。
主人公たちの軌跡
<都心>→<飛行機>→<ストックホルム>→<車>→<奥地の村>
この異質な文化圏との境界線を踏み越えるのは、あくまで徐々に。
しかも、ストックホルムから奥地の村へ向かう途中、みんなで薬物もやるのだ。(海外ではいたって普通の感覚だろう)
さらには、主人公の女性ダニーは始めから精神的にもかなり不安定。
精神世界の描写も頻繁に描写される。
だんだん現実と精神世界の境界もあいまいになってくる。
しかし、この村は確かに狂っているのである。
否、ここの村人にとってはいたって常識的な感覚で為される、昔からの伝統儀式なのである。
Ⅲ 踊りと歌について
やはり、洗脳とは切っても切り離せないのが、儀式である。
いつの世も、音楽は表現手段だ。
音楽は、まぁ歴史上では演出の手段として用いられる。何の演出か?世界観だ。
(音楽好きとしてはこれは皮肉なことだ)
それがわかっているから、いつの世でも為政者の政治に、信仰に、都合よく利用されてきた。
この映画の祝祭中の催しにおいても、女たちが踊り続けてトランス状態になる場面がある。
「踊っていれば、言葉なんていらない!」
これは、もう、つまりそういうことだ。
中世ヨーロッパの各地で同時多発的に起きた「死ぬまで踊り続ける」という舞踏病。
これは「踊りのペスト」「死の舞踏」とも呼ばれ、重大な課題とされていた。
実際の病だったのか、原因は明らかになっていない。
しかし、私はこれは集団ヒステリーの一種という説を推す。
日本の「ええじゃないか」もそうだ。
次々と伝染して、ある線を超えるのだ。狂気が。
それほどに、当時の人々の不満は現代をぬくぬくと生きる我々の想像を絶するものだ。
話戻って、要するに、踊りや音楽は一種のトランス状態を生むのだと言いたい。
私は音楽活動としてゴスペルをやってたから、その感覚は、まあなんとなくわかる。
この映画でも、その意図で以て歌や踊りがふんだんに使われ、それがホラーとわかって観ている鑑賞者にとっては不気味に映る。
効果は抜群といったところだ。
私としては映画内で一貫して流れている、文字通り通奏低音が、なんか気味悪くて、上手いなぁと思った。
余談だが、私は学部時代に西欧近代のフォークロア研究をかじっていたので、もうこのへんたまらない。
おわりに
いかがだったろうか。しかし、これらは私の目を通した『ミッドサマー』の感想のほんの一部。
まだ観られていない方で興味を持っていただけたなら、サイトだけでも見てみてください。
※R-15。エロとグロが苦手な方は、ちょっとやめといたほうがいいと思うけど。。笑
↓
映画『ミッドサマー』公式サイト 絶賛公開中
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!(^^♪