今夜は月食ですってよ!
「暗くなるのかな。月食ってどういう現象?」
「月が欠けますでしょ?きっと暗くなると思います!」
先輩と勇んで外に出たが、すっかり終了していた。
驚くほど、綺羅綺羅しい金の光!
揃ってぽかんとした。
「残念。16時から始まって20時には終わってたんですって」
「そんなの見れるわけなかろうが」
月に向かって咆哮。
◇
「でも、私、白い月も好き」と先輩がぽつりと。
「あっ、わかります。まだあたりが明るいときの月でしょう」
「そうそう。まだ空がうっすら明るいとき」
あぁ、今夜をこうして過ごせて良かった。
隣に優しい人がいて。
◇
人は誰かの何気ない言葉で傷つき、それでも、誰かの何気ない言葉に救われ、前を向ける。
次は、2086年。
65年後にまた逢うのでしょうね。こんな綺麗な綺麗な夜に。