こんばんは、Clariceです。
2年前くらいに詩だけ作って放置していたものに音楽をつけました。
Crystal Palace at night ー大温室の空想ー - 印象をただよう告解部屋
―古代帝国に嫁ぎし 王妃の夢は 天幕のむこうの星座で描かれる
今宵もチェンバロの音色に導かれ、印象をただよいましょう。
以下、曲のイメージもととなった詩。
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月明かりのなかで 輝き放つ
砂の地の居城が 今宵の住処
亜熱帯の緑を集めた 箱庭のなかで
硝子は露にぬれ 煙る草木の 濃密な香りのなかで
蔓は 木々を這いあがり、天まで届く
果実は実り、朝は目覚めて 祝福を告げる
月の雫落とす羊歯の葉の影
アルカディアの残像 故郷の唄
銀色の星屑は グロッケンシュピールの煌き
すべての物語が そこには眠る
◇
ひとは、どうして大温室という空間に惹かれるのでしょうか。
その歴史は古く、原型となる栽培空間はポンペイ遺跡から発見されているようです。
生活のための古代からの知恵といった側面もあり、また時代を進めると帝国主義の加速した治世の、虚栄の象徴と思えなくもない。
それぞれの区画を進むと、花をつけたサボテンや、熱帯の食虫植物、人工池に浮かぶ水生植物、ツンドラのコケ植物が次々と現れる植生のパッチワーク。
ある意味、グロテスクでもあります。
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Crystal Palaceといえば、第一回ロンドン万博(1851)の舞台となった全面ガラス張りの建物です。
庭師であるジョセフ・パクストンが設計した画期的な構造でした。温室の設計を応用したのです。
そして、温室の人工性から連想したのはバビロンの空中庭園。
世界七不思議と呼ばれるうちのひとつ、新バビロニア帝国の伝承から着想を得ました。
バビロニアの王が、故郷メディアを懐かしむ王妃のために屋上庭園を造って喜ばせたというエピソードです。
空中庭園と言っても、庭園自体が空中に浮いていたわけではなく、階段状に続くテラスに、木々や葉が吊り下がっていたという意味でギリシャ語からの誤訳です。
他の6つはなんだったかと調べてみると、ギザの大ピラミッド、エフェソスのアルテミス神殿、オリンピアのゼウス像、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟、ロドス島の巨像、アレクサンドリアの大灯台。
「世界七不思議」というのも勘違いされやすい日本語の誤訳で、本来のthe seven wonders of the worldの意訳は「世界にある7つの驚異的な見るべきもの」といったところ。
古代ギリシアの数学者・フィロンが選んだ、昔の旅人のガイドブック的な感じでピックアップされていたような感じです。
とはいえ、遥か昔の技術で作られた巨大建造物はロマンがあります。
現存するのはギザの大ピラミッドのみというのが残念でなりません。
私は大学のゼミでロマの人々のことを研究テーマに選んでいましたが、そのテーマに出会わなかったら庭園や温室の文化の変遷を選んでいたかもしれません。
それくらい、庭や植物園を訪ねるのが好きなのです。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました!(^^♪