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「星の道」をたどるスペイン巡礼の旅を追体験―『アルケミスト』著者、パウロ・コエーリョのデビュー作『星の巡礼』

星の巡礼』角川文庫(1998)

パウロ・コエーリョ/山川鉱矢・山川亜希子=訳

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神秘の扉を目の前にして最後の試験に失敗し、奇跡の剣を手にすることができなかったパウロ。残された唯一の道は、「星の道」と呼ばれる巡礼路を旅して、自らその剣を見つけることだった。師ペトラスに導かれ、ピレネー山脈からサンチャゴへと続くスペイン巡礼の道を歩くパウロに、様々な試練が課せられる。だがそれは、人生の道しるべを見つけるための偉大な旅であった....。自らの体験を基に描いた、パウロ・コエーリョのデビュー作。

著者について

著者は、『アルケミスト 夢を旅した少年』(1988)で一躍有名となった、ブラジル・リオデジャネイロの小説家だ。

アルケミストー』は38ヵ国の言語に翻訳されたことにより世界で3000万部売れ、国際的な文化現象となったベストセラーである。

スペインの羊飼いの少年が、ピラミッドにお宝を探しに行くというお話。

一見、夢に溢れた冒険譚のようだが、内容は意外と寓話的であり哲学に満ちた物語だ。


自伝的小説として。『星の巡礼』の魅力

私は、前述した『アルケミストー』も読んだが、『星の巡礼』の方が好きだし、愛着を覚える作品となった。

スペインの異国情緒あふれる街道、黒髪のジプシー、飄々とした旅のガイドの青年ペトラス…

冒頭から、すべての要素が読者の意識を、異国へと連れて行ってくれる。

本書でパウロは、神秘主義の世界的な秘密結社であるRAM教団の友愛会「トラディション」の一員であると述べている。
(教団名などは実在するのかは不明だ。名を変えて書いているのかもしれない)

冒頭にて、そのマスターの称号を手にする最後の試練を、パウロはしくじったのだった。

失敗を挽回する恩情として、サンチャゴ・デ・コンポステーラへの旅が決まった、という流れ。

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旅の中で、師として随行するペトラスにいくつもの実習を授かる。

ちなみに、実習の内容は各章の最後に事細かに記載されている。

特に興味惹かれたのは、「生きたまま葬られる実習」だ。

・床に横になり、胸の上に両手を組み、死んだ時の姿勢になる。
・自分が生きたまま葬られる様子を想像する
・葬式の進行にしたがって、体を固くしていく
・教会から墓地へ、そしてお棺ごと土の中へ入れられる
・脱出しようと試み、だんだんがまんできなくなる
・限界まで来たら、お棺の蓋をほおり投げ、四肢を大きく動かし、自由になった自分を発見する

この実習ののち、パウロは大きく成長する。愛を思い出し、喜びと平和に気づく。
このシーンが印象的だった。

このように、少々スピリチュアル色も強い作風ではあるが、単純にパウロの旅を見守る視点で楽しめた。



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現在でも、キリスト教徒らによるサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼は毎年数万人単位で行われているらしい。

ホタテ貝を巡礼の目印に持って歩くというのが、なんとも中世的で興味深い。

日本の四国地方を歩くお遍路もそうだが、実際に足を運ぶのは大変だ。

しかし、日常に疲れた時など読書を通した非日常体験に身を置くことで、視界が開けることもあるのではないか。

では、また。

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今日も最後まで読んでくださりありがとうございました(^-^)

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